あとがき



 サイト移転とともにはじめた長編連載、本編全19話。いかがでしたでしょうか?
いやぁ、立海は何度書いても新たな発見がありますね。
今回はその中でも今まであまり書いてこなかった真田がお相手役。
真面目を絵に描いたような朴念仁の真田に恋をさせるのは至難の技でした。
まず、一目惚れはないだろうから、いかにヒロインの内面に惹かれていくか、時間をかけて少しずつ気持ちに変化があることを丁寧に描けたらな、とがんばったわけですが……
 あと、心配だったのはなんといってもヒロイン像ですね。
連載当初に頂いた感想でも『今までとは違った感じのヒロインですね!』などと言っていただいたのですが、蓋を開ければやっぱりいつものヒロインというか心に影があるような子で……しかもそれを読者にもギリギリまで隠していたので、自己投影するにはなかなか困難なヒロインになってしまったかなと反省しております。注意書き必要だったかな。物語の都合上だったのですが、その辺の情報開示加減はいつも難しいですね。
ヒロインがなんで真田を好きになったかも最後の最後までわからないし、そういった面でも自分の中では挑戦したヒロイン像でした。

 そして、真田を書くにあたって外せないのが幸村との関係ですよね。
全国決勝S3で宿敵手塚と当たり、やっと積年のわだかまりを晴らせると思ったのに、遺恨を残すかのような試合になってしまったこと。
真田自身より幸村の方が今となっては心のしこりになってるんじゃないかなって。
病に倒れた自分をずっと「諦めるな!」と励ましてくれた唯一無二の友人に自分の信念を貫くことを諦めさせたこと。部長としては英断だけど友人としては辛いものがあったんじゃないかなって。
でも、案外真田自身はもうすでに乗り越えていそうだな、と。
確かに真っ向勝負を捨てろと言ったのは幸村だけど、それを実行したのは己なので、そもそも真田は幸村に対してもなんら恨みなどないでしょうしね。
 当初はヒロインを煙たがる幸村にしようと思ってたんですが、気がつけばヒロインは幸村のお気に入りだし、丸井や仁王からも特別に想われるというすごいヒロインになりました(笑)
でも、3人とも真田を好きなヒロインが好きなので、恋というより一個人としてヒロインを好ましく思ってるって感じでしょうか。
まぁ、丸井くんはわりとガチ恋でしたが(笑)
丸井くんの(ヒロインの恋を)応援したいんだけどたまに邪魔したくなるという大人になりきれない感じが等身大の高校生で自分的には大変好きなタイプの丸井くんです(笑)

 それから、これは個人的なことなんですが、これを書いている間に初テニミュ体験してきました! 夢のTDC!
全国立海前編です。このお話の最初に出てくるあのシーンを生で観戦できたこと。なんとも貴重な体験でした。
 まず迫力が全然違う! 特に音! 重そうな球とか早そうな球っていうのをよりリアルに感じることができて素晴らしかった!
それから、なんというか、動きが流れとして観れるのでよりテニスっぽいというか、漫画やアニメだとどうしてもそこがコマになってしまうので自分なりにモーションとモーションの間を想像しながら読んだり観たりしなきゃいけないけど、まぁテニス素人の私にはそれが難しくて(笑)
今回それで手塚のテニスの美しさを再認識させられました(真田じゃないんかぁいっ!(笑))

 話を『クレイジーガール』に戻しましょうか(笑)
この話のメインテーマはもちろん真田との恋。
ですが、サブテーマというか裏テーマとして、“怒り”という負の感情にどう向き合うべきか、ということをずっと考えていました。
「ごめんなさい」の言葉で済めばいいけど、全部が全部そう上手くはいかない。
まったく間違いを犯さない人間というのはいないでしょう。問題はそんなときに素直に「ごめんなさい」が言えるか、「ごめんなさい」を言われて許せるか。
そして、“許さない”という選択は悪なのか。
希望を持ってそれと向かい合った結果のお話でした。
 それにしても、このカップル順番無茶苦茶すぎて作中では抱きしめ合うくらのことしかしてないんですが、何もかもがこれからはじめてというのもなんだかいいですよね。


 ここまで読んでくださった方々へは感謝の言葉しかありません。
本編はこれにて完結ですが、番外編をちょこちょこアップできたらな、と思っております。(現段階では来週あたりに新婚旅行初夜編がアップできればな……と)
 そして、年内もしくは年度末あたりでこんな感じの文庫本にまとめられればな、と!
イベントには出る予定ないので超少部数の通販になるかと思います。また詳細が決まり次第サイトやTwitterでお知らせしますので、ご興味ある方はこちらもぜひよろしくお願いします。


 通販開始しました! コチラより(2020.03.08現在)

 それではまた新しい物語で出会えることを。



inspiration by music:米津玄師『馬と鹿』



 樫野葉りん
 2019.10.28