あとがき

どの学校も頑張ったのは間違いないのですが、立海は幸村のことがあるので、その中でもより大変だったんじゃないかなぁって。
常勝立海大というプレッシャーに、大切な友人が突然倒れるという、二重の苦難がまだ14、15歳の少年にかかったかと思うと、おばさん涙が…(笑)
どうしてもそんな彼らにご褒美があげたくて、こんな話になりました。(若干二名ご褒美になってないけど…)
無事8月20日(原作の全国決勝戦日)にアップできてよかったです。
(原作の全国決勝戦日は8月23日でしたね。失礼しました。)

今回はじめてオムニバスという形式で書いてみました。
伏線というか、各話にちょっとずつ他のエピソードにつながるような要素を散りばめてみたいなっという試みでした。
いつもポツポツと書きたい場面を貯めていき、つなぎ合わせているという書き方をしているのですが、今回は接続点が多すぎてあれよあれよという間に破綻して…(笑)
しまいには年表まで作りながら執筆していました。(笑)
原作も何度も立海のところを読み直したり…何かと苦労の多い話でした。
そして気がつけば、ほどんどの話で誰かしら泣いてる!一番意外なのは柳かな?書いてる自分でもちょっとアレってなりました。(笑)

↓以下各話の解説(と大変わかりにく伏線回収…)という名の言い訳を。


00.帰る場所
ワイワイみんなではしゃいでる彼らが書けて楽しかったです!
この話は、特に他の話に繋がるように意識したエピローグのような話です。
真田がヒロイン②からのメールを読んでいたり、赤也がやたらヒロイン①に懐いていたり、ブン太がヒロイン③に電話していたり、本来なら幸村たちと同じ徒歩組の柳がバスに乗って向かったのはヒロイン④のところだったり。
年表に続き、焼肉屋での座席表作ったり、いつもとは違った変な作業が楽しかったです。(笑)


01.それはキラリと光る
今回の真田はちょっと女々しいですね。そしてキング オブ 間の悪い人だな。(笑)
でも、もし真田にも好きな子が本当はいて、でもあんな状況になったらどうするかな?って思って書きました。
それから、立海にチアガールがいるのを見て、いつかチアガールとの恋が書きたいなっとも思ってました。
このヒロインは学年のマドンナ的イメージです。美人で、でもお高くとまった感じのしない、男子にも女子にも、それから教師にもみんなに一目置かれるような良い子です。
きっと真田、仁王以外にも彼女のことを好きな人はいたでしょうが、ヒロインはずっと真田が好きという設定でした。
それから幸村が真田にお礼を言うシーンは書けてよかったなと思ってます。
真田が副部長でよかった。ってどうしても(私が)真田に伝えたかったので、大変満足してます。(笑)
真田は不器用ながらも一生懸命、幸村の穴を埋めるように自分を必死に鼓舞しながら闘いつづけてきたように見えたので、それを褒めてあげたかったんです。
それから真田と丸井の組み合わせもなんか新鮮でいいかなっと。
相反する存在だからこそ自分一人では導き出せない答えが得られるキッカケになるかなって。
ちなみに丸井がこのときロッカーから回収したのは『03.膝をついて捧げるのは希望』で出てきた彼女のために買った限定のお菓子です。
約十ヶ月(汚い)ロッカーに眠っていたお菓子は果たして無事なのかわかりませんが、彼はコレを彼女に渡すつもりで取りにきました。(笑)
そして最後、ヒロインとの場面。急にヒロインが現れてクエスチョンマークの真田くん。
なぜヒロインが真田に会いにきたのかは次の『02.君は優しい』でわかるので、ぜひぜひ合わせて読んでいただきたいです。
決して電波なヒロインなわけではありません。(笑 でもこれだけ読むと本当電波な子みたい… 笑)
タイトルの“それ”は作中にでてくるショーケースだったり、汗や涙、真田自身、をイメージしました。


02.君は優しい
初めて悲恋を書きました。普段自分が悲恋を読まないので、書かないつもりでした。
けれど今回はオムニバスという形で幾つかの恋を書くにあたって、全部ハッピーエンドなんてそんなことありえるのか?という謎のリアリティー追求心により悲恋を書くことになりました。ごめんね、仁王。
でも一番書きたかった場面が多いのはこの話でした。
仁王と真田は目に見えてる部分こそ対照的ですが、心根が似ているんじゃないかなって。
なんで自分の出身地を明かしたがらないのかとか、なんであんな試合(詐欺)を始めたのかとかいろいろ考察した結果、今回はこんな話になりました。
そしてまたも幸村くん。本当各話で大活躍!(笑)
仁王が弱音を吐くなら、柳生でもなく、ブン太でもなく、もちろん真田でもなく幸村かなって思います。
そして最後、ここから『01.それはキラリと光る』の最後の場面に繋がります。
なぜヒロインが真田の元に行ったのかわかっていただけたでしょうか?
クライマックスは、仁王がヒロインとガラス越しに見つめ合うシーン。
自分の好きな子が自分を見てくれているけど、それは自分じゃないっていうのがすごく切ないなって。これ仁王夢あるあるかな?(笑)
それからオチは柳生くん。私の中では立海一、不思議ちゃんな柳生くんです。(笑)
やっぱり仁王といえば柳生くんなので、この二人の会話が書けてよかったです。
あと柳生くんの発言は(わかりにく)冗談です。本気のフォモではありません。(笑)
ちなみ仁王が言っている詐欺師が出てくる映画とは『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のことです。


03.望んだ花は咲かずに折れる 膝をついて捧げるのは希望
少し趣向を変えて唯一ヒロイン視点&続きもので。
実は始めに書いていたものは、何故か丸井とヒロインと柳がドロドロな関係に発展してしまい、丸々一本書き直しました。
書き直してよかったと思ってます。全部書き終えて、話として一番好きかもしれません。
今回ヒロインが4 人出てきますが、それぞれ全然違う女の子を意識して書いたつもりです。
その中でもこのヒロイン③とヒロイン①は対照的なイメージ書きました。
たぶん、ヒロイン③が思っている通りヒロイン①は結構ウザイ女の子だと思います。(笑)
ヒロイン①はなんというか少女漫画の王道ヒロインっていうか、一途で一生懸命で自分のそんなところを隠すことないので、他の女子からしたら「何あの子?」みたいなイメージ。
これくらいの歳の子って、自分の気持ちを隠すことなく行動できる子が少ない分、それをしている身近な存在がいたらやっかみの対照になるだろうなっと。
逆にヒロイン③はよくいそうな内気な女の子をイメージしました。冒頭シーンでちょっと嫌な感じに書いてしまいましたが、たぶん自分がこの立場だったらこう思うよなって。
私もこの世界だったらヒロイン①はあんまり好きじゃない。(笑)

今回のブン太は、部の状況を客観視できている存在としてわりと冷静なイメージで書きました。といっても本人が冷静なつもりで、やっぱり彼も混乱してるんですけどね。
ヒロインにお菓子買ってあげるところとか、バレンタインの思い出とか二人がちゃんと想い合ってたんだなって伝わるように書いたつもりです。
それからブン太とヒロイン①の絡み。
他の部員はわりと自分のことや部のことで精一杯なので、ブン太が一番ヒロイン①のことを心配してたと思います。
ブン太にとってヒロイン①も大事な部活の仲間の一人なんです。
そしてブン太にとっての大事な仲間といえばジャッカルくん!そうジャッカルくん!
この二人は小学校が一緒なので、今回こんな出会いの設定にしてみました。
この二人のシーンも気に入ってます。いい友達だなっこいつらって。
あ、勝手に別な高校にしてごめんね、ジャッカルくん。(笑)
そして『00.帰る場所』でヒロインが号泣していたのはブン太のせいでした。(ちょっと意味違うけど、泣かしたのはブン太くん)
ちょっと泣かせ方がジャイアンですが、これが彼らしい優しさかなって。
そして最後、ヒロインを呼び出し、無事復縁!
このあとデートしていたところを『01.それはキラリと光る』の真田に目撃されています。


04.ルビーの原石
赤也の悪魔化のことを考えると妄想はつきませんが、今回はこんな形になりました。
自分のことしか考えていなかった子供の赤也が、立海に入って少しずつ自分以外の人の為に勝ちたいって思う成長を表現したくて書きました。
なので、恋愛はサブ的イメージ。仁王に引き続き悲恋でごめんね。
関東大会で負けたことは、結構赤也の中でネックになってるんじゃないかなって原作を読んでいても感じました。
冒頭の先輩という呼びかけは、ヒロイン①だけのことではなく、幸村や真田にもかかってる気持ちで書きました。
赤也はみんなのために勝ちたかったです。


05.水面下でもがく白鳥を皆知っている
本当、この話が一番難産でした。
そもそも柳というキャラクターが書きにくいんだー!(と叫んでみる)
一時期柳ばっかり人様の夢小説を読みまくっていたのに、いざ自分で書こうとすると全然書けなくて…
あと柳の公式の好きなタイプにいつかツッコミたくって今回はあんな裏話を書きました。
しかし、仁王(と真田)以外は今回のヒロインに好きなタイプ合ってるじゃん!とあとあと気づきました。(笑)
恐るべきヒロイン①の女の勘です。(笑)
話の中でも幸村に指摘されていますが、柳の本来の性格はわりとネガティブだったらこうなるんじゃないかなって思いながら書きました。
ヒロインの言葉も赤也の言葉も自分に向けられた非難だと思って落ち込む繊細な柳。
柳は策謀という立場に逃げたとこの話の中で言ってますが、誰もそんなことは思っていないはずです。
真田や赤也のように自分でどんどん動くタイプもいれば、柳のような冷静に全体のことを考えながら動くタイプもいる。
どちらも大切だって、少なくともレギュラー陣とヒロイン①は思っています。
そして等々柳まで泣かす幸村。(笑)
『04.ルビーの原石』で赤也と幸村がコートで話したあと、今度は柳が幸村と話すシーンに繋がります。
幸村にとってヒロイン①も大事だけれど、同じくらい彼らとの約束も支えになっていたってことを柳にわかって欲しかったんです。
そして『04.ルビーの原石』後のもっと成長した赤也との対話シーン。
自分独りで戦ってるわけじゃないって、歴史を未来に繋げようとする赤也が、予想外の成長っぷりで、自分で書いているのに、驚きました。(笑)
その赤也の言葉でやっと「冷静」っていうのが非難の言葉じゃないことがわかったネガティブ柳。
大学一年生と中学三年生の恋。まぁ柳ならアリか。(笑)


06.ハッピーエンド
やっとここまできた!長かった!(笑)
実は同時進行で白石の長編(『がんばれ少年少女』)を書いていたんですが、いつの間にそちらが先に完結してしまいました。
『05.水面下でもがく白鳥を皆知っている』を読んでいただいた方なら気付いたかと思いますが、今回めちゃくちゃ出張っているおっさんはヒロイン④のお父さんです。
『05.水面下でもがく白鳥を皆知っている』で幸村が叫ぶシーンがそのままこの話に繋がっています。
今まで幸村にとってヒロインは可愛い妹に近い存在でした。もちろん大事だけど、女の子として特別かと言われれば迷うくらいの立ち位置。
けれど今回のことがあって、改めてヒロインの大切さに気づく幸村を書きました。
この時の幸村にとってテニスは自分をかけたすべてで、自分そのものなんじゃないかなって。
なのでそれを象徴するテニスボールが彼の心臓として夢に出てくる設定にしました。
ヒロインが容赦なく幸村にテニスの話をしていますが、わざとです。
他の話でも触り程度に他のキャラから語られてますが、結構ヒロインもいっぱいいっぱいです。
本当はこのヒロイン視点の話も書こうと思ったんですが、思った以上に殺伐とした話になったので却下しました。(笑)
幸村がかどうしても勝ちたかった一番の理由が部員&ヒロインへの「ありがとう」だったら素敵だなって。
結局負けちゃったけど、それでも幸村の優しさが他の部員にもちゃんと届いてみんな幸せになる話にしたかったんです。
ヒロインが育てた花壇は『03.望んだ花は咲かずに折れる』でぐちゃぐちゃにされちゃった花壇です。
他の話で夏の大きな黄色い花と表記した花はすべて向日葵でした。これも伏線というかキーワードの一つかな?
“夏”という季節を特に強調したかったので使いました。
そしてエンディング。
まさかの10年後。(笑)
とってつけたように仁王や赤也にも幸せになってもらいました。(笑)


いかがでしたでしょうか。大変わかりにくい話になっている気がしてならないので、こんな言い訳を長々としてしまいました。
映像として浮かんだ話を文章に起こすのが難しくて未だ葛藤しています。
しかしなんとか今回、私の中で一つ立海の物語が完結することができました。
普段、自分は気に入ったキャラしか読まないくせに、こんな強制的?にいろんなキャラとヒロインがわちゃわちゃする話を読んでいただいた皆様、本当に本当にありがとうございました。
ご意見、ご感想いただけると泣いて喜びます。これからもよろしくお願いいたします。



樫野葉りん