全部で渾身の力を込めて殴るような重さで駆け抜けた全9話。前後編やおまけなども含めると結構なボリュームになりました。
途中で仕様が変わってしまって申し訳有りません。
初の夢主複数(いや、以前に『親愛なる君へ』でやってるか……)。難しかったけれど、自分と非常に楽しく書けました。
夢小説という観点から普段は極力感情移入の妨げになりそうな“友達”は排除してきたのですが、そうするとどうしてもヒロインと相手のキャラだけの話になってしまうというか……前々から表現に窮屈さを感じていて……。
「このヒロインいっつもテニス部メンバーとしかいないけど、同性の友達いないの?」って大きなお世話を焼くことが多かったのですが(笑)、今回はそこから一歩奥につっこんで、彼らの生活をそのまま覗いているような登場人物ならびに物語になればいいな、と思いながら書きました。
↓以下各話、各組み合わせの解説です。
(ヒロインの名前はデフォor変換後のものです)

忍足侑士×

『ノンブレス』『天秤座の男』『鳴かぬ蛍は身を焦がす』

恋が少しずつ愛に変わったふたりのお話です。王道の恋愛がテーマです。
まず『ノンブレス』がこの物語の妄想の出発点となった話でした。
嫉妬のお話ってあんまり書いたことないな〜、侑士の話書きたいな〜、ってとこから膨らませているうちにヒロインの友達がでしゃばり、じゃあその子たちのことも含めてがっつり書くか! となったはこびです。
このヒロインが一番捉えどころがなくて、『ノンブレス』は一旦一人称で公開したあと、納得いかなくて三人称に戻して公開し直しました。
一見何考えているかわからないアンニュイなヒロイン、忍足好きそうだな、て(笑)
ていうか、私がその組み合わせが好きなだけかもですが(笑)
恋に恋しているほど乙女ではないけれど、忍足の中には“理想の恋愛”像がわりとしっかりあって、自分の振る舞いをそこに合わせて恋愛をしてそうだな、と。ええかっこしいですからね。
恋愛をしてる自分に酔ってる部分があるんじゃないかな、と。
でも、同時にそんな自分を嫌っていて、葛藤してたらおいしいな、と(笑)
心に刃を忍ばせてる忍足も好きですが、弱くて優しい忍足も大好物なんです!(笑)
相手のことを完全に理解しているわけではないけれど、そこも含めて信頼している。そんなふたりになりました。

滝萩之助+

『私を変えたもの』『あこがれ』

4人のヒロインの中で一番成長した子かな、と思ってます。
最初は滝フラれる予定じゃなかったんですよ(笑)
もっとヒロインを翻弄するというか、そういう立ち位置で曖昧に終わらせる予定だったんですが、書いているうちにフラれちゃいました(笑)
けど、今ではその結果で納得してます。
『あこがれ』の滝が“きっとは忍足を忘れることはないだろう。忘れることなく、心の成長の糧にして、違う実を結ぶのだろう。”と思ってるシーンがあるんですが、まさにそれというか。
おまけで忍足にとびきりの笑顔を向けるシーンは『天秤座の男』の忍足が“彼女はまるで砂漠の砂のような女の子だった。注いでも注いでも乾くばかりで、一輪の花も咲かない。”と言っていたヒロインの印象と対比させたくて書きました。
それからあと滝と宍戸の関係ですね。
レギュラー交代ののち、あの二人はどんな関係になったのかな? っとずっと考えてまして……。
宍戸はまぁああいう性格だから(笑)後腐れなさそうだし、滝も飄々としているというか表面上は今まで通りだけれど、やっぱり思うところあるんじゃないかな、っと。
含みがあってたまにゲスな行動がチラチラする滝さん(笑)賛否両論ありそうですが、自分の中の滝像です(笑)
マネージャーヒロイン二人とも仲が良い設定なのが、自分ではお気に入りです。
お気に入りといえば、跡部が滝に「辞めるなよ」とフォローを入れていたという設定も自分の中ではお気に入りです。

宍戸亮×+鳳長太郎

『神様』

宍戸の夢小説の話なのにほとんど宍戸さんの出番なし(笑)
でも、どちらかというとこの話の焦点は長太郎でした。
長太郎の“好きな人が好きになった人は、俺にとっても好きな人です”の語りがこの物語の中で輝けばな、と思って書きました。
「好きな人の〜」はてんでバラバラな話ばかりですが、自分の好きな人の好きな人を意識する話であることは共通項でした。
終始これは恋じゃないと苦しんでるヒロイン。気の強いヒロインの誰にも見せない脆い部分を宍戸が気づくことは最後までなさそうだけれど、それでもいいんじゃないか、と思ってます。ヒロインにとっても。
忍足カップルと共通しますが、すべてを理解しているわけではないけれど自分のことを信頼してくれる相手がいるってことは生きていくうえでとても幸せなことじゃないかな、と思います。
付け加えとして、注意書きで、“鳳→宍戸を思わせる描写アリ”と入れましたが、本当に長太郎が宍戸をそういう意味で好きかどうかはグレーゾーンで(笑)
あくまでもこのヒロインはそう思ってる、という感じでした。

日吉若→→跡部景吾

『我らが王様』『恋』

ここが一番夢小説らしい、というかこれ以外ただのキャラ×モブ女というか(爆)(笑)
本当はヒロインが跡部を好きっていう設定を隠したかったんですが、相手がわからない夢小説なんか誰も読まねぇよな、と思ってなくなく(跡部のことが好きな子)とつけました。
今にして思えば、(日吉に想われてる子)という説明でもよかったかもしれないな、と(笑)
他ヒロインは何考えてるかわからなかったり、裏があったり、で内面に視点を向ける面白さがあったのですが、このヒロインは嘘がつけないというか馬鹿正直というか……とにかく根暗にしない! と意気込んで書いたヒロインです(笑)
明るくて元気で友達思いの普通の女の子。
でも、やっぱりそんな女の子にも誰にも言えない秘密はあるでしょう。
このヒロインが跡部のことを好きだと気づいているのはずっと一緒にいたマネージャーヒロインとずっとヒロインのことを想っていた日吉だけでした。(ジローちゃん、滝は薄々は気づいていそうですが……)
跡部本人は……どうでしょう? 気づいていそうな……。跡部に気持ちに関してはあえてはっきりと決めて書きませんでした。
ですが、跡部がヒロインのことをひととして好いているのは間違いないです。
才能や運がある人間を妬んだり憎んだりせず、一生懸命日々を頑張ってるヒロインの姿に跡部は自分がイギリスで過ごすた幼少期を照らし合わせていました。
おそらくイギリスでの生活は跡部にとっては辛いことも多かったのではないかなっと思ってます。彼は絶対に誰にもそんなことは言わないだろうけど。
『我らが王様』の跡部の台詞で“「頑張ることが出来る自分をもうちょっと認めてやれって話だ」”は間接的に過去の自分へ向けた台詞でもありました。
そして、ちょいちょい小出しにしてたヒロインと日吉の関係。
はっきりとは書かなかったけど、日吉はこのヒロインのこと好きなんだろうな、と感じてほしくてそこかしこに忍ばせました(笑)
ちなみに日吉の恋は部員全員にバレてるという設定です(笑)
それにしても片想いって何度書いても切なくなりますね。
『恋』の“「別にいいんじゃないですか。みんな同じ恋じゃなくても。恋に正しいも間違ってるもないでしょう」”と“「貴女はそのままでいてください」”という日吉の台詞も『神様』の長太郎の台詞同様この物語の大事な部分でした。

その後の話

『トーキョーガール』『おまけ』

氷帝話の最後はまさかの謙也です(笑)
この話は最後までおまけにしようか迷いました。そのくせ一番長いという矛盾……。
タリーズは互いのことを意識しまくってるとこがすごく萌ポイントというか。
本当に正反対の二人なので自分が持ってないものを相手がもってるような関係ですよね。
今回はどちらかというと謙也が侑士に対して抱えるコンプレックスの話になりましたが、侑士も絶対謙也に対してなにかしらコンプレックスを抱えているであろうな、と思うと滾ります(笑)
ヒロインたち(いないけど)がみんな幸せでいてくれたらいいな、と願いを込めて、これを最終話にしました。


最初のがっくんジロちゃん宍戸の氷帝幼馴染トリオの話を載せたくて無理矢理おまけを作りました(笑)
でも本編では取りこぼした小ネタなどを、と思ったのですが、忍足との話や、宍戸との話なんかはちゃんと書けてよかったな、と思ってます。
のことがあってからがっくんは忍足のことを密かに心配してたらいいな、と。
いろいろと溜め込んでぐつぐつ煮込んでどろどろのスープにしちゃうタイプの忍足にとってがっくんみたいな生野菜ドンッ! みたいなさっぱり潔い性格の友達がそばにいてくれるのはとても救いなんじゃないか、と。
がっくんとが仲良くなってるのも微笑ましくていいですね。でも、あんまり仲良くなりすぎて忍足はちょっと妬いてたり(笑)
あと都合の良い合同練習(笑)
赤也×、柳×で話も考えていたのですが収集つかなくなるのでさすがにカットしました。
やっとのブン太のファンという設定が活かせてよかったです(笑)


約15年前。私が最初にテニプリにハマった頃。その頃から私の一番は忍足侑士でした。
その想いが強すぎて今までなかなか氷帝が書けなかったのですが、「きちんと書いて残したい!」という気持ちは消えなかったので、今回頑張ってみました。
初っ端から(緩い)エロだし、そのあとも悲恋や同性愛の要素アリだし、何より複数ヒロインという問題作にはなりましたが、いかがでしたでしょうか。
お気軽にご意見ご感想ください。そして、氷帝愛を語りましょう。



inspiration by music:フジファブリック『若者のすべて』



それでは、また。
2017.11.13 樫野葉りん