は可愛い。
可愛い。可愛い。可愛い。

部活中、走っている彼女を遠くからそっと見つめる。
自らの気持ちが恋だと気づいたものの、俺はどうしたらいいのか全くわからず、俺たちの関係は結局なんの進展もしていない。

部活の休憩中に、が一人になるのを見つけて話しかける。
「こないだ千歳と何話してたん?」
「こないだ?」
「…俺が裏門で見つけたときや…」
「あぁ、強引に腕引っ張られた日のことか」
「…おぉ」
「裏庭の木の上にな、子猫がおってん。それを千歳クンが助けてくれたんよ」
「子猫?…それだけか?」
「??それだけや」
俺がそれを聞き嬉しそうにすると、が不審そうに俺をみる。
そういえば同じこの場所で、「お前なんか嫌いや」と言われたのはそんなに昔の話ではないことを思い出し、また気持ちが沈んだ。
を好きなってから気持ちが上がったり、下がったり激しい。これが恋なのだろうか。


◇◆◇


もうすぐ年の瀬。
うちの学校では一年に一度、謎の部長会議なるものがある。お互いの部活の近況などを報告し合い、それぞれのいいところを吸収し合おうという試みらしい。よくわからん。
俺はそれに出席するために一度部活を抜け、校舎の中に戻った。

部長会議が時間通りに始まり、各部活の部長それぞれの発表を順に聞く。
今更だが、そこで俺は初めて他の部活にもマネージャーがいることを知った。サッカー部とバスケ部とそれから陸上部。
会議が終わったあと、部活に戻る廊下でたまたまその部長同士で一緒になった。
「そっちの部活ではマネージャーってどんなことしとるん?」
「まぁ、主にドリンク作ったり、タオル用意したり?」
「うちも、うちも。たまーに、球拾いとかな」
「あと記録付けたり?」
「どこも同じような感じなんやなー、うちも備品整理したり、コート整備したり、審判したり、洗濯したりやなぁ」
「え?」
「ん?」
「テニス部のマネージャーってそんなことまでやりよるん?」
「お、おう。あとは部員と一緒に基礎練とかな」
「え?マネージャーはタイム計ったり、記録付けたりだけとちゃうん?」
「いや、うちは一緒に走っとるで。んで、あとでマネージャーに報告して、記録つけてもろうてるけど…」
「…ようそれで、マネージャー辞めへんな…」
「うちだったら、絶対辞められとるわ」
「すごいなぁ、テニス部のマネージャー」

部活に帰るともうその日の部活は終わってしまっていて、コートにはもう誰もいなかった。
自分も着替えて帰ろうと思い、部室に行くとが一人で机に突っ伏して眠っていた。
多分いつもどおりオサムちゃんを待っているのだろう。
そっと普段はじっくり近くで見られないの顔を眺める。
他の奴に言われて改め思うが、やっぱりうちのマネージャーはすごかったらしい。
わかっていたつもりだったが、それ以上のようだ。
が他の奴らに褒められて、俺は自分のことのように誇らしかった。
いつだって頑張っている。頑張りすぎってくらい。

まっすぐ前を見る力強い姿に何度も勇気づけられた。
その強さに憧れた。
絶対に諦めないその姿勢が美しい。
見習いたいと尊敬した。
何かと懸命に戦う姿に胸が痛くなった。
守ってあげたいと思った。

それがいつしか自然に恋になった。


が静かに目を覚ます。
「あれ?白石?戻ってきたん?」
「おう、はいつもオサムちゃんのことどれくらい待ってるん?」
「うーん…二、三時間やろか」
「…それ結構無駄な時間ちゃう?」
「せやけど、オサムちゃんが帰り道が暗くて危ないって一人で帰らしてくれへんのや」
「なぁ…せやったら俺と一緒に帰らへん」
俺、今自然に言えただろうか。不安になる。
「え?」
「一人やなかったら問題ないやろ?」
そう言ってに有無を言わさず、腕を掴み、一緒に職員室へ向かう。

「つーことで、これからはは俺が送るわ」
「おお、そうか。頼むわ白石」
オサムちゃんがひらひら手を振り、俺らを見送る。

「なぁ、なぁって!」
何か言われるのが怖くて、の腕を掴んだままどんどん進んでいると、校門をしばらくすぎた辺りで、が脚を止めた。
「…なんや」
「今日、スーパー寄ってもええ?」
「は?」
「せやから、スーパー!今日の夕飯の買い出ししたいねん」
「…荷物持ったるわ」
「初めっからそのつもりや」
にっこりとが俺に笑った。